音水信二のはてなブログ

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ウルクロ『ジード』最終回記念。ウルトラマンジード考察 第一回 『ジード』がおかれていた状況と戦っていた3つのもの。

  


ジードのおかれていた状況 「大成功した、前作『ウルトラマンオーブ』」

 ウルトラシリーズ50周年を記念『ウルトラマンオーブ』では過去作品のキャラクターを名前を使うだけにとどめ、シナリオ自体は全く新しいものになりました。

 内容としては主人公が過去作品の登場キャラクターの力が宿されたアイテム「おもちゃ」を使いながら自分を取り戻していくという内容です。主人公はウルトラシリーズの歴史が擬人化されたような存在です。

ウルトラマン自身が51年の過去を振り返りながら、自分自身を取り戻していくという内容を上手く表現しました。
 

 

otomizusinnzi.hatenablog.com

 

 


 『オーブ』の次回作『ジード』は『オーブ』で触れられなかった三つのものと戦うことを表現しました・

それは
過去の財産に頼りつつ作品を作ることの是非。

おもちゃを売るために過去の模造品を作って番組を作っているという批判。

そしてそれを踏まえた上で現状のニュージェネレーションウルトラシリーズを続けることに意味があると宣言するというものです。

 

 次の2、3、4ではそれぞれについて詳しく説明していきます。


2 ジードが戦った三つのもの。その一「継承されたものだらけの『ジード』」
 『ジード』は前作『オーブ』と違い過剰なまでにこれまでの『過去の財産』を使っています。
ジードは一話からレオのオマージュの夜と水の中で戦うことになりますし、マスコットのキャラクターは50年前に出てきた宇宙人を現代風にアレンジしたものです。
さらに当時8年前のキャラであったゼロはレギュラーでガンガンでてくるし、パワーアップもするし、話によっては番組を乗っ取ったのかと思うようなこともありました。
 ジード自身もベリアルの息子と言う、これまでの築き上げた財産を担保に作られたキャラクターです。さらに変身アイテムだって10以上前の作品に登場したウルトラマンヒカリに作られたものです。
 さらに演じている役者さんだって過去作に登場した子役さんが大きくなった姿です。
 登場する怪獣も一体を除き、過去に登場した怪獣と及びそれらの派生形です。その一体も昔登場した宇宙人の戦闘兵器であり、前作『オーブ』におけるギャラクトロンのようにオリジナルの世界観を作り出していないのではとも言えます。

私の推測ですが『ジード』の企画は『オーブ』の結果が出る前に始められています。そのため一種過去作との絡みがすくない『オーブ』がこけた時のための保険だったとも考えられます。
しかしそのように過去の要素は便利かもしれませんが、それに頼りすぎると作品そのもののオリジナルである要素がなくなってしまいます。
作品としてのアイデンティティそれが『ジード』が戦った三つのものの一つです。


3 ジードが戦った三つのもの。その二「大量のおもちゃ」
ニュージェネレーションと呼ばれるウルトラマンたちは、変身するのにたくさんのアイテムを使います。そのためおもちゃと売るための作品だという批判もあります。
ウルトラマンが何のために作られているかという問いの答えは人によって異なりますが、制作するのにお金が必要なのも事実です。
近年ではファンクラブを作る、ネットフリックス限定にするなどさまざまな工夫が行われていますが、おもちゃの売り上げも重要な収入源の一つです。
 そもそも円谷プロの大株主がおもちゃメーカーのバンダイだったりもします。
 前作『オーブ』ではおもちゃをカッコ良く売りつつテーマを描くことに成功しました。


しかし悪意を持って言えば「おもちゃを売るためにヒーローを作って金儲けしている。それでいくら魅力的な作品や人物、ヒーローを描いても、おもちゃを売るための手段にすぎない。今のウルトラマンは金儲けのためのウルトラマンの模造品にすぎない」という批判することもできます。
ジード』はそれらの批判に真正面から立ち向かいました。


ジードが戦った三つのものその三「なんで50年以上前の番組の続編をしているの?」というツッコミ。

そもそもウルトラマンはなぜ続いているのでしょう。私事ですが私はウルトラマンが大好きです。ウルトラマンたちの活躍が見れるのはとても嬉しいです。
しかし『初代ウルトラマン』や『ウルトラセブン』では人類はウルトラマンの力だけでなく自分たちの力を使って守っていこうというメッセージを最終回で出しました。
しかしその数年後『帰ってきたウルトラマン』が放送されました。そもそもなぜウルトラマンは帰ってきたのでしょうか。その後も『A』や『タロウ』、『レオ』などが放送されましたが、内容は初期ウルトラシリーズとは少し異なる作品でした。
円谷プロには『ファイアーマン』『ミラーマン』『アイセンボーグ』『ジャンボーグA』『アイセンボーグ』などウルトラマン以外のヒーローもたくさんいます。
どの作品にもいいところはありますし、ファンもいます。しかしここで一つ疑問がでます。ウルトラマンとそれ以外のヒーローは何が違うのでしょうか。
円谷プロの作品には素晴らしい作品がたくさんあります。それならばウルトラマン以外のヒーローも活躍させていけばいいのに、なぜかお店やさんのおもちゃ売り場にあるのはウルトラマンシリーズのキャラクターだけです。同時期に放映されたウルトラマンジャックウルトラマンエースのグッズはあってもミラーマンやファイアーマンのグッズは売られていないのです。

『ザ★ウルトラマン』の頃になると実写番組であるはずのウルトラマンの新作を作りたいが、実写を作る予算がないので、アニメで作るということが起きました。

その後『ウルトラマンティガ』以降平成ウルトラシリーズが作られていきましたが、それ以外のヒーローはミラーマンが少しリメイクしたほか、過去の没企画が復活したりしましたが、それ以外は過去のキャラクターをモチーフにしたキャラクターがウルトラマンゼロの仲間として登場する程度でしか復活していませんでした。

 このように『ジード』制作当時に円谷プロはなぜかウルトラマンに関しては積極的に商品展開していくのに、ウルトラマン以外に関しては積極的に展開していないという状態になっていました。

皮肉的な言い方をすればウルトラマンが長く続いているのも、円谷プロウルトラマン以上の作品を作れなかったからとも言えます。
好意的に見えばウルトラマンにそれだけ世代を超えて愛される何かがあったとも言えます。しかし本当にウルトラマンに世代を超えて愛されるたけのものがあるのならばウルトラマンという名前を名乗ってなくても、作品の中にある「世代を超えて愛される」要素によって人気になるはずです。
有名どころを言えば『新世紀エヴァンゲリオン』はウルトラマンの影響も一部ですが入っていますし、考え方によれば、ウルトラマンほどのブームを起こした番組なのですから、目に見える、見えない問わず社会に大きな影響を与えているはずです。
しかしなぜか円谷プロからはウルトラマン以外のコンテンツを出して成功することができてなかったのです。

 それに対するアンサーとして円谷プロにできることは4つあります。

1 ウルトラマン以外の全く新規のキャラクター。コンテンツ、IPを立ち上げる。
2 『ファイアーマン』『ミラーマン』などウルトラマン以外を復活させる。
3 「批判させるような要素」がないウルトラマンを作る。
4 現状のウルトラマンを放映制作することに意味があると主張する。


ジード』放映からおよそ3年がった現在。円谷プロ

「1全く新規のキャラクター。コンテンツ、IPを立ち上げる。」についはは今のところ行われていません。

 

2020年6月2日訂正

 現在円谷プロ東映アニメーションの共同制作作品『KIAZU DECOODE 怪獣デコード』が制作中です。

 

 

しかし「2ウルトラマン以外を復活させる。」は順調に進んでいます。
『オーブ』放映時から『レッドマン』(数え方によってはウルトラシリーズの一つとも言える)をYOUTUBEで公式公開するなど過去のコンテンツの復活をこころ見ました。
そして『ジード』の翌年『グッドマン』が復活し大ヒットをしたことで一種『ジード』の戦いは順調に進んでいるとも言えます。
その後もこれまでの『ウルトラマンフェスティバル』とは違う『円谷プロ作品全体のお祭り』イベントを開始、さらに『円谷プロ作品全体の月額性サービス』も開始
 かいじゅうのすみかという怪獣を中心にしたイベントのマスコットを『ファイアーマン』に登場する怪獣にしました。
 『グリッドマン』は第二期を製作決定し絶好調の状態です。このようにウルトラマン以外を復活させる路線は順調に進んでいます。

3 「批判させるような要素」がないウルトラマンを作る。
庵野秀明監督による映画『シン・ウルトラマン』の公開や漫画やネットフリックス版アニメでSF作品『ULTRAMAN』が公開されるなどこちらも順調に進んでいます。

 しかしそれらの作品が公開された場合現状のニュージェネーションシリーズのウルトラ
マンを放映する必要はないのでしょうか。
ジードだけではありませんが近年のニュージェネレーションにおけるウルトラマンの変身アイテムにこれまでのウルトラシリーズのキャラクターたちの力を借りたものになっています。
 言い方によれば、これまでの財産を使ってでしか人気を出せていないのではいう意見もあります。もちろん現代に合わせた価値観のアップデートも行っています。
 しかしそれは前々作『ウルトラマンX』で防衛隊のおもちゃが売れなかったから防衛隊をださない。『ウルトラマンX』は怪獣を描くことに意識しすぎたか次回作ではウルトラマンを魅力的に描くことに集中するなどもあり、考え方によればウルトラマンの魅力を怪獣を倒すヒーローに限定したものにしているとも言えます。
1でも述べた通り、それらの条件の中『オーブ』はヒーローと作品を描くことに成功しました。
しかし『ジード』それが果たして良いことなのかという疑問がテーマになっています。私はスタッフ中に『ウルトラマンギンガ』以降のニュージェンレーションの商品展開に対する疑問とそれらを正当化したいという思いがあったのだと推測しています。


 『ジード』が戦った三っつのもの三つ目は「4の現状のウルトラマンを放映制作することに意味があると主張する」ことです。


5 「2、3、4、のまとめ」
このように『ジード』は過去の財産に頼りつつ作るシリーズ番組に、作品単体としてのアイデンティティがあるのかという葛藤と。
 おもちゃを売るために過去の模造品を作って番組を作っているという批判。
を抱えつつ、それでも現状のニュージェネレーションウルトラシリーズを続けることに意味があると宣言するという戦いを行っています。


 次回記事では『ジード』にはどのような比喩が隠されているのか、そしてどのようにこれらの問題定義についてジードはどう戦ったについて書いて行きます。