『平成たぬき合戦ぽんぽこ』感想。日本人の心のよりどころはどこへ行く。
先日10数年ぶりに『平成たぬき合戦ぽんぽこ』を視聴しました。非常に面白い映画でした。
この映画は環境保護の映画だけではなく、何か活動を始めた人に置きがちな出来事を描いた作品でもあります。そしてアニメを作るという行為を描いている作品でもあります。たぬきたちが化ける時に数人で一つのものになっていることはアニメを作り人を化かすという行為そのものです。ラストシーンはのちの『風立ちぬ』も同じようなことをしています。この時に素直に感動するのが宮崎駿の演出なのでしょうね。
私は『平成たぬき合戦ぽんぽこ』でも『風立ちぬ』でも泣きましたが、その涙の質は全く違ったものでした。
『風立ちぬ』では素直に泣けましたが、『平成たぬき合戦ぽんぽこ』ではいろんなところがいたくなりながらも涙があふれてくるというものでした。素直に泣きたいならば『風立ちぬ』です。『平成たぬき合戦ぽんぽこ』は見ていて少しみじめになりがならもそれでもなんとかやってやろうと感じさせる涙でした。それこそ「生きよう」と感じさせるものです。
一方『風立ちぬ』は素直にこれまでやってきたこの対して誇らしくなるような涙でした。どちらも違ってどちらも良いのでしょうね。
富野由悠季作品ならば、『逆襲のシャア』は『平成たぬき合戦ぽんぽこ』型の感動だと思います。『機動戦士ガンダム』はどちらでしょうか『風立ちぬ』型でしょうかね。富野由悠季作品は『Gのレコンギスタ』、『リーンの翼』、『キングゲイナー』、『ターンエーガンダム』、『ブレンパワード』と涙が出てくる感動というわけではないですが確実に心に温かさを感じることができるという作品だと思う。
高畑勲作品では『となりの山田君』が『Gのレコンギスタ』などの上で上げた富野由悠季作品と同じ種類の感動だと思う。
私はこの映画を日本人の心のよりどころの喪失とそれを再び探す物語だと感じた。
日本の元からあった風景がなくなり、西洋化が進む中自分たちはどうしたら
ハンバーガーにハマってしまったりもする。そんな自分たちはどうすればよいのかという物語だと感じた。
高畑勲は『チエ』以降日米合作の『NIMO』の降板後、日本人を描いた作品しか作っていない。
高畑勲は『平成たぬき合戦ぽんぽこ』以降『となりの山田君』、『かぐや姫』という名作を作っていく。『ぽんぽこ』はその作品とこれまでの高畑勲作品の懸け橋としてとても重要な作品なのだろう。
『平成たぬき合戦ぽんぽこ』とても面白いので是非見て欲しい。