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おすすめ作品紹介シリーズ 第二回 津原泰水『歌うエスカルゴ』 2019年に見た中で一番好きな作品です。 小説

 

 この小説は私が2019年に読んだ本というより作品で一番面白い買った作品です。著名な小説家の小説ですが、内容はとても読みやすくライト文芸のようでした。
 イメージとしては絵のないライトノベルという感じです。


あらすじ

 主人公尚登《なおと》は讃岐うどん屋の次男に生まれる。東京で小さな出版社に勤めていたが、ある日調理師免許を取得していたことから社長に出向させられてしまう。
 それはリストラではないかと思いながらも向かった先は写真家秋彦《あきひこ》が営む、吉祥寺の立ち飲み屋しかし近いうちに本物のエスカルゴを出す料理店にリニューアルオープンするとのこと。ファミレスなどで普段食べているエスカルゴは本物のエスカルゴではなく、本物のエスカルゴはとても美味しいらしい。

 しかし秋彦の妹、梓《あずさ》や、立ち飲み屋の看板おばさん剛《ごう》さんなどには経営を心配からか冷ややかにリニューアルを反対されている。
 尚登は店の奥にある、秋彦の家で、秋彦、梓、秋彦の父と同居しつつ、三重にある本物のエスカルゴを養殖する工場で修行し、吉祥寺でおいしい本物のエスカルゴ店を出すお店を営もうとする。


登場人物
尚登
 本作の主人公。讃岐うどん屋の次男。東京で小さな出版社で編集者として勤務したが、リストラかのように出向させられる。就職浪人しており現在27歳。以前はスーパーでバイトをしていた。
 調理師免許を所持していたことから、エスカルゴ料理店で働くことになる。
 フランスの女優ソフィー・マルソーが好みのタイプである。

秋彦
 渦巻きを愛するカメラマン。写真集も出版している。俺様タイプ。実家の立ち飲み屋を本物のエスカルゴを出す料理店にしようとする。


 色白で、美人、ハーフのような女子高生。毒舌家。


 立ち飲み屋の看板おばさん。お客さんにとても人気である。秋彦の計画には反対している。

秋彦の父
 秋彦と梓の父。年の問題から立ち飲み屋で働くことを断念する。


作品の内容
 ネタバレなしで『エスカルゴ』の内容を語るとすれば、グルメ物であると同時に誰もしようとしないジャンルのお店を作り、広げているサクセスストーリーのようでもあります。
 尚登と秋彦の友情ものでもあり、尚登のほんのりとした恋愛ものでもあります。
 キャラクター同士の会話劇も非常に面白いです。私は一つ屋根の下で同居している尚登と梓の関係が好きです。

 このように『エスカルゴ』は様々なジャンルの魅力を持っています。しかし同時にそれぞれのジャンル物が持っている、キツさはありません。それぞれの魅力を生かしつつもちょうどいい色合いに収めており、いやらしさを感じさせません。


公式サイト、出版社など
 この作品には公式の宣伝サイトがあり、作者インタビューや評論家の推薦文などもあるのですが、正直サイト内にはネタバレ要素がかなり多く、個人的は読み切る前に宣伝サイトを見ることはあまりおすすめではありません。
 もしこの記事を読んで、『歌うエスカルゴ』を読んでみたいと思われた方は、公式サイトを読まずに先に本を買ってきて、読んだうえで、読後に公式サイトを読むことをおすすめします。

 またKADOKAWAから発売された『エスカルゴ兄弟』を改題されたのが、現在角川春樹事務所から発売されている『歌うエスカルゴ』であり、内容は一部変更店があるものの、同じことを書いているとのことです。

 

津原泰水先生がすごい。
 『エスカルゴ』に限定すれば、何と言ってもおいしそうな料理。文章だけでこれほど料理を食べたいと思わせるような魅力があります。津原泰水先生は以前からおいしい豆腐を食べる小説を書いたり、美食文学を集めたアンソロジーを製作されるなど食に関する描写も得意とする作家です。
 また「音楽」や「人形」、「SF」、「ホラー」「大正時代」、「探偵物」などこれまで様々な「ジャンル小説」なども執筆されており、それぞれその世界がとても伝わってくる作品を製作されてきました。
 また短編もとても素晴らしい作品を書く方です。私は短編ならば『11』に収録されている。『琥珀みがき』と戦争小説『土の枕』が大好きです。

 津原先生がデビューしたのは少女小説、今で言うライトノベルであり、エイリアンと女子高生の恋愛小説を書いていた方です。
エスカルゴ』はあとがきで少女小説時代の名義で出して復活作として出そうかと思ったと書かれるほど、読みやすく、どこか明かる作品であり、言うならば白津原と言えるような作品です。
 そのためか、文章はとても読みやすく、会話文など多いため、普段はラノベやネット小説しか読まない人、なんならまったく本を読まない人にも自信をもっておすすめできる作品となっています。
 もし今私の友人が「普段小説を読まないんだけど、小説デビューしたいのでおすすめ作品を教えてくれ」と言われたら私は『エスカルゴ』をお勧めすると思います。


津原泰水『歌うエスカルゴ』 ハルキ文庫から発売中です。

 

 

 

 

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